純子を拐った白のセダンを追う風見
車から投げられる手榴弾の爆発を避けながら屋根に乗り移る激しいカースタントを見せる。V3放送開始以来、回を追うごとに爆破などの演出が派手になっていく中で宮内洋氏自身からのリクエストで宮内氏自身が以前にキイハンターで経験のあった九十九里海岸でのカースタントが撮られている。これは宮内氏も気に入っていたのか当時の思い出としてインタビューやトークイベントなどでこのエピソードを語っている。
さて、肝心のロケ地はというと九十九里海岸といえば日本で最大の砂浜とされていて、激しく揺れる車載のカメラ映像に加え映り込む構造物もほぼ皆無という取りつく島の無さ。まず、ヒントとなったのは助け出した田口博士の娘が事情を語るシーンで映り込む漁船。船尾に"上サ 松ヶ谷"と書かれている。"上サ"というのは地名なのか船主の名かピンとこないが長い九十九里海岸の中程に"松ヶ谷"という地名があり恐らくここの地区に置かれた船だろうと推察される。今であれば漁港などに係留されたり然るべき場所に船上げされるだろうが当該地区の航空写真を見ると数艘砂浜に揚げられているのが確認出来る。また特定の決め手になりそうなのがシークエンスの最初に車の背後に僅かに確認出来る構造物に着目。これはエピソード最後の同所での走行シーンで望遠で風見を捉えたカットでもう少し大きく確認出来る。別カットで何度か映る櫓(夏前の撮影時期を考えると海水浴シーズンのためのものか?)とは形状の異なる骨組み。仮説を立てた松ヶ谷地区からカメラの向いている南西方向を1975年の航空写真で追っていくと…それらしき構造物を本須賀海水浴場に発見。海の家に囲まれてあるそれは砂浜に設けられた滑り台ではないかと思われる。航空写真は各年代があるわけではなく飛び飛びなので前後の年代で追ってみると1970年には存在せず、75年の次の79年には存在。次の83年には滑り台はなく少し離れた砂浜に別のプールが作られていた。背後に映っていた骨組みは70年代前半から10年弱ぐらいの間、砂浜に存在した滑り台ではないかと考えると位置関係は一致する。
船尾に松ヶ谷と書かれた漁船
V3第26話の砂浜のシークエンス冒頭、車の横の丸の辺りにうっすら確認出来る。 ラストの走行シーンに映る骨組み。一度滑り台だと思って見るともはや滑り台以外には見えなくなってくる。60代くらいの地元の方のご記憶に無いだろうか。
松ヶ谷地区の南西側、1975年の本須賀海水浴場。丸で示した場所に海の家に並んで滑り台と思われる構造物がある。隣の平屋と思われる海の家の屋根に落ちる影から3階建くらいの高さはありそうでそこそこ高さがあったのではないだろうか。なお、この場所は仮面ライダーストロンガー第6話でも使用されている。こちらの映像ではもう少し滑り台然としたシルエットが確認出来る。ストロンガーOPにも流用された映像でV3同様に広い砂浜で爆破シーンが撮影されるが、ここで使用されたカブトローの1台が以後の撮影には登場しておらずここでの撮影で何かしらのトラブルに見舞われたのではないかと推察する()。また、仮面ライダーXでも最初期の撮影で千葉方面の砂浜が使用されているらしいが数枚のスチール以外記録が残っておらずその映像は本編にも使用されていない。スチールを見る限り九十九里らしい広い砂浜が確認出来るがここと同じ場所かまでは分からない。
因みに当時、滑り台があったあたりは現在は駐車場になっていた。
出典:仮面ライダーV3 第26話「怪人ヒーターゼミのミイラ作戦!!」 毎日放送/東映/石森プロ 1973年8月11日放送